親子で楽しむ! 新連載「いきもの博士の研究室」ARTICLE

「 春の女王バチは、人を刺している場合じゃない!? 」PART2

生き物が大好きで、なんでも知りたがりのダヴィンチ君。
家のすぐ近くにある、いきもの博士の研究室にいつも遊びに行っています。
優しいいきもの博士は、いつもダヴィンチ君の質問や疑問に答えてくれます。
そんな二人の研究室でのお話を中心に、昆虫をはじめ、生き物の生態、活動、不思議を
連載でお届けします。ぜひ、お子さまと一緒にお楽しみください!
これを読めば、生き物がもっと好きになる!

ダヴィンチマスターズ「いきもの博士の研究室」

 「女王バチは、どう決まる? 

春に見られるアシナガバチは、みな女王バチでした。夏までに女王バチが働きバチを産んで巣を大きくしていくのです。一方のミツバチは、春にはすでに集団が出来上がっています。生活の違いを、博士が教えてくれるようです。


(画像)二ホンミツバチ。体長10 mmほど。日本には、このほかに一回り大きいセイヨウミツバチもいる。

いきもの博士「ミツバチは働きバチも越冬できるから、春の時点である程度働きバチが集まった巣を作ることができるよ」

ダヴィンチ君「そうなんだ! 小さいのに、結構丈夫な体なんだね」
「彼らが越冬できる秘密は、集団でいることにあるんだ。越冬の最大の敵は寒さ。体の中の器官や液体が凍ってしまうと、またたく間に死んでしまうからね。でも、ミツバチはそれを集団で乗り越えるんだ。ちょうど、ダヴィンチ君もやったことある、あの温まる遊びのようにね」

「温まる遊び……おしくらまんじゅうかな?」
「そう、彼らはおしくらまんじゅうをして冬を越すのさ。彼らは巣の中で、女王を中心にした蜂球(ほうきゅう)と呼ばれるおしくらまんじゅうを作る。働きバチたちが羽を細かく動かして、温度を保つんだ。そうすると、蜂球内の温度は30℃を超える。彼らは変温動物で、45℃くらいまでは平気だから、ぬくぬくと冬を越せるんだ」

「なかなか知恵があるね」
「そうだね。それから、ミツバチは女王バチが決まるシステムも、アシナガバチに比べて複雑になっているよ。それぞれどうやって決まると思う?」

「う-ん、分からないなぁ」
「まずは、アシナガバチの女王の決め方から教えるよ。」

「はい! 」
博士「それはズバリ、偶然です! 」

「え! 偶然? 特別な女王なのに? 」
「そう。偶然決まるんだ。ハチの巣は一部屋につき一匹の幼虫が入る。ここに、働きバチが次々エサを運んでくるんだけど、働きバチは特に担当の部屋が決まっているわけじゃないんだ。つまり、毎回、別々な幼虫にエサを与えていく。そうなると、やがて偏りが出来るよね。エサを多くもらった幼虫はそれだけ大きく成長するし、逆にもらえなかった幼虫は小さく成長する。その、大きく成長する幼虫の中でも、特別大きい個体が、女王として羽化するんだよ」


(画像)成長したヒメホソアシナガバチの巣。この部屋のいずれかから、新女王が誕生する。

「そうだったんだ。確かに偶然だね。じゃあ、ミツバチは?」
「ミツバチの方は、しっかりと、女王バチになる幼虫の入る部屋が決まっているよ。少し大きめに作られていて、王台と呼ばれるんだ。この王台に入った幼虫だけが、働きバチからローヤルゼリーを与えられて、女王に成長するんだ」

「ローヤルゼリー? 」
「そうさ。ミツバチは知っての通り巣の中で蜂蜜を作るんだけど、これは外で集めてきた花粉を栄養価を高めて貯蔵するためなんだ。ローヤルゼリーはその蜂蜜を、若い働きバチが食べて、さらに栄養価を高めることで作られるよ。蜂蜜は黄色だけど、ローヤルゼリーは成分の違いから白色をしている。だから、王乳とも呼ばれるよ。栄養価の高さが、女王を育てる決め手なんだ」

「そうなんだ。じゃあ、王台に生まれた幼虫は安心して女王になれるわけだね」
「いや、そうはいかないよ。実は王台は一部屋だけじゃないのさ。一つの巣に、だいたい10部屋は作られるよ。一部屋だけだったら、その幼虫が病気にかかって死んでしまったらそこで終わってしまうよね。それを防ぐために、王台はたくさん作られるんだけど、全ての王台幼虫が女王になれるわけじゃなくて、一つの巣につき新女王は一匹と決まっているんだ。正確に言うと、王台から生まれるのは女王候補なのさ」

「たくさんの女王候補ってことは、選挙とかするの?」
「そんなに優しいものじゃ無くてね、彼らは決闘をするんだよ。新女王は羽化すると、本能で周りの王台を破壊していくんだ。それで、羽化の遅い女王候補はまず死んでしまう。次に、ほぼ同時に羽化したような女王候補がいる場合には、かみ合いによる決闘をする。負けた方は体が破れて、死んでしまうよ。最終的に残った早く成長した強い候補だけが、新女王になるんだ」

「うわあ、凶暴なアシナガバチなんかよりよっぽど弱肉強食だね」
「そうさ。アシナガバチも複数の女王候補が羽化するけれど、決闘しないで別の場所に飛び立っていくことが多いからね。だからこそ、ミツバチの女王はとっても強くて、アシナガバチの女王が1年で死んでしまうのに対してミツバチの女王は3~4年も生きるんだ」

「そんなに生きるんだ!さすが、勝ち残っただけはあるね」
「そうだね。ただ、女王が複数年生きると、ある問題が起こる。分かるかな?」

「えっと……次に生まれてくる女王がいるってこと? 」
「そう。そうなると同じ巣に2匹の女王がいることになる。片方の女王が出ていくことで解決するよ。この時に行われるのが分蜂(ぶんぽう)なんだけど、これがなかなかに強烈だよ」

PART3へつづく

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