親子で楽しむ! 新連載「いきもの博士の研究室」ARTICLE

「 春の女王バチは、人を刺している場合じゃない!? 」PART3

生き物が大好きで、なんでも知りたがりのダヴィンチ君。
家のすぐ近くにある、いきもの博士の研究室にいつも遊びに行っています。
優しいいきもの博士は、いつもダヴィンチ君の質問や疑問に答えてくれます。
そんな二人の研究室でのお話を中心に、昆虫をはじめ、生き物の生態、活動、不思議を
連載でお届けします。ぜひ、お子さまと一緒にお楽しみください!
これを読めば、生き物がもっと好きになる!

ダヴィンチマスターズ「いきもの博士の研究室」

 「ミツバチの分蜂と、フェロモンの秘密ミツバチの分蜂と、フェロモンの秘密 

ミツバチの女王バチは4年ほど生きることがあります。ですが、毎年新しい女王が巣の中で誕生します。新女王と旧女王。どちらが出ていくのでしょうか?

ダヴィンチ君「女王バチが2匹いると、いけないのかな? 別に同じ巣に2つの家族が住んでもいいんじゃないの?」
いきもの博士「そうはいかないんだよ、ダヴィンチ君。働きバチは、同じ女王に仕える仲間かどうか判断するのに、お互いの匂いを使うんだ。この匂いには、女王のフェロモンが含まれる。女王が2匹いて、匂いも2種類あると、働きバチは混乱して互いを攻撃したりしてしまうんだ。だから、同じ巣に2匹の女王がいる状態にならないように、新女王が羽化する直前に、旧女王が巣を出ていくんだよ」

「なるほど。でも、巣にいる働きバチはみんな、旧女王の働きバチだよね。旧女王が出て行ったら、新女王を残して巣が空っぽになっちゃうんじゃない?」
「それがね、面白いことに、旧女王と出て行く働きバチと、巣に残る働きバチは、ほぼ半々に分かれるんだよ。しかも、今までためてきた花粉や、蜂蜜も、ほぼ均等に分配されるんだ」

「すごいね!話し合ったり出来ないのに、どうやって2つに分かれるんだろう?」
「まだ完全にはわかってないんだけど、これには女王が出す色々なフェロモンが関係していると言われているよ。女王バチは、フェロモンを出す達人だからね。例えば、働きバチはみんな針を持っている。そして、針の正体は産卵管だと、前に教えたね。でも、働きバチが卵を産むことはほとんどないんだ。これも、女王が出すフェロモンが、産卵を抑制することに原因があるよ」

「そうなんだ。これも、ローヤルゼリーを食べて育つから身につくの?」
「そうさ。ちなみに、女王は成虫になった後もローヤルゼリーをもらって育つんだけど、ローヤルゼリーの栄養価が高すぎて、ずっと食べていると太って飛べなくなってしまうから、旅立つ前はローヤルゼリーをもらわないようにするフェロモンを出すよ」

「フェロモンを使うのが本当にうまいんだね!」
「そうだね。ちょっとそれたけど、旧女王の旅立ち、分蜂に話を戻すよ。話した通り分蜂の時には巣の半分のミツバチが一斉に外に出てきて、別の場所に移るんだけど、ミツバチの一つの巣にはそもそもどのくらいのハチが住んでいると思う?」

「うーん、わからないなぁ。千匹くらい?」
「千匹だと、その巣はかなり少ない巣だね。巣によってバラつきはあるけれど、数千~数万匹のハチがいるよ」

「数万!?じゃあ、分蜂で半分に分かれても、1万匹が一気に出てくるってこと?」
「そういうこと。だからこそ、なかなか迫力があるよ。ほら、こんな感じ」

(画像)二ホンミツバチの分蜂。

「うわあ、すごい数だ!この木に引っ越してきたってこと?」
「そうだね。旧女王とついてきた働きバチは、この場所で新しい巣を作る。そして、女王バチはその中でまた新しい働きバチや女王候補を産んで、来年の分蜂に備えるんだ」

「分蜂は毎年行われるんだね」
「そうさ。毎年1万匹を超えるハチたちが生まれるから、毎年分蜂しないと、巣がいっぱいになって限界を超えてしまうだろうね」

「確かに、ミツバチが巣から溢れちゃいそうだね。でも、そんなに産まなくてもいいんじゃないの? 千匹くらいでも、普通にやっていけると思うんだけど」
「最終的に、千匹残れば命をつなぐことは出来る。でも、ミツバチには天敵が多いから、初めから千匹だと、絶滅してしまうと思うよ」

「ミツバチも針を持っているよね。それでも、天敵がいるの?」
「ミツバチは針を持っているけど、アシナガバチの針とは違って、一回使うとほとんどの場合、針が体から抜けてしまうんだ。その理由は、針の構造にある。前に話したように、アシナガバチの針は尖針と刺針に分かれていた。でも、ミツバチの針には尖針がなくて、代わりに尖針にある鋭い歯が刺針についているんだ。だから、深く差すことは出来ても、抜くことがなかなか出来ないんだよ。それで、体から針が抜けてしまったミツバチは、そこから体液が漏れたりして多くの場合すぐに死んでしまう。だから、ミツバチは針を持っていてもなかなか使えないんだよ」

「そうなんだ。じゃあ、どんな時に使うの? 」
「巣そのものを襲われたときだね。巣が壊されたら、さすがにどうしようもないから、全力で針を使って守るよ。でも、本当の天敵は、固い体を持っていてミツバチの針は通らないんだ。しかもその天敵は、アシナガバチよりも大きな針を持っている。日本で最強クラスの毒をもつ、針を持つ昆虫と言えば……」

ダ「スズメバチか!」

「正解! ミツバチの最大の天敵はオオスズメバチなんだ。オオスズメバチとの戦いで、命を落とすミツバチはとても多いよ。でも、彼らは決して無駄死にはしない。ある、必殺技を繰り出すからこそ、死んでしまうんだ。次は、ミツバチとオオスズメバチの攻防について教えてあげよう!」

PART4へつづく

 

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