親子で楽しむ! 新連載「いきもの博士の研究室」ARTICLE


本当に、その日ばかり。ヤマカガシの秘毒!

生き物が大好きで、なんでも知りたがりのダヴィンチ君。
家のすぐ近くにある、いきもの博士の研究室にいつも遊びに行っています。
優しいいきもの博士は、いつもダヴィンチ君の質問や疑問に答えてくれます。
そんな二人の研究室でのお話を中心に、昆虫をはじめ、生き物の生態、活動、不思議を
連載でお届けします。ぜひ、お子さまと一緒にお楽しみください!
これを読めば、生き物がもっと好きになる!

ヒバカリのことを学んだダヴィンチ君。博士は次に、ヤマカガシについて教えてくれるようです。

ダヴィンチ君「ヤマカガシの毒は、人が死ぬほど強いの!?」
いきもの博士「そうさ。ヤマカガシの毒は日本の陸生のヘビの中では一番強くて、致死量で比較するとマムシの4~5倍の強さがあるよ」

(画像)ヤマカガシ

「すごく強いね!そんなに強いなら、前にマムシがあだ名になっていることを教えてくれたみたいに、ヤマカガシもあだ名になっていたりするのかな?」(噛まれたら、その日ばかり!? 変わった名前のヘビたちの秘密Part1参照)
「いや、マムシと違って、ヤマカガシが人のあだ名になることはほとんどなかったみたいだよ。これは、ヤマカガシが長い間、無毒のヘビだと思われていたことによるんだ」

「え! そんなに強い毒ヘビなのに、無毒だと思われていたの? ヒバカリとは正反対なんだね」
「確かにね。これには2つ理由がある。まずは、ヤマカガシは山のヘビという意味だけど、実際には昔から田んぼや畑でよくみられるヘビだった。ヒバカリは田んぼなんかにはあまり出てこないから、ヤマカガシはヒバカリより人になじみ深かったんだ。そして、ヤマカガシはマムシに比べて、おとなしいヘビだった。自ら人を噛むことがほとんどなかったんだよ。これが一つ目の理由さ」

「そこら辺にいる、おとなしいヘビというのがヤマカガシの印象だったんだね」
「そうだね。そしてもう一つの理由は、ヤマカガシの毒を出すための牙、毒牙は口の奥の方にあって、長さも数ミリと小さいから、万が一噛まれても、毒牙が刺さることが少なかったんだ。これが二つ目の理由。ちなみにマムシの場合は、口の入り口のところに鋭くて大きな毒牙があるよ」

(画像)ヤマカガシの毒牙。クサリヘビ科のマムシとは違い、ナミヘビ科のヤマカガシは毒を注入する力も弱いが、毒は非常に強い。

「こんなに小さいんだね。でも、もし噛まれたら……」
「まずは、血液凝固という作用が起こる。これは、噛まれたところの出血を止めるための働きの事だよ。これは普通の怪我でもおこるんだけど、ヤマカガシの毒があると、これが過剰に働いてしまうんだ。すると今度は、血小板という、血をとめるための成分が、体全体で不足するようになってしまうんだ。そうなると、今度は血が止まらなくなってしまう。そればかりか、全身の色々なところで内出血を起こし始める……」

「うわあ、怖いね」
「そうなると、色々な臓器がうまく働かなくなって、多機能不全や、脳出血と言った理由で死亡してしまう。毒の量が少なければ、内出血だけで終わるけど、ヤマカガシの毒は少ない量でも強力に働くから、特に子供どもの場合では、重症になりやすいよ。ヤマカガシが毒ヘビと認識されるようになったのは1970年代前半なんだけど、中学生が噛まれて死亡した例から判明したそうだよ」

「噛まれちゃったら、もうどうしようもないの……?」
「ヘビの毒には、血清療法という治療法があるよ。まず、ヘビの毒を集めて、ヤギなんかの哺乳類に少しずつ、期間を置きながら注射する。すると、ヤギの血液の中には毒の働きを抑え込む、抗体と呼ばれる成分が出来るんだ。この、抗体を含むヤギの血液を、人間に注射しても問題ないように成分を変えたものを、血清と呼ぶよ。この血清を、ヘビの毒が回る前に注射すれば、毒の作用が収まって、助かることができるよ。ただし、血清は前もって用意しなきゃいけないものだし、どこの病院にもあるわけじゃない。血清があっても、助からなかった例もあるから、やっぱり噛まれないことが一番だね」

「そうだね。ヒバカリと間違えないように注意しなくちゃ。どうやって見分けたらいいのかな?」
「ヤマカガシとヒバカリを見分けるのはそう難しくないよ。よし、もう少しヤマカガシについて教えてあげよう!」

Part4へつづく

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