親子で楽しむ! 新連載「いきもの博士の研究室」ARTICLE

博士の休憩室 クイーン、ワーカー、ドローン?

生き物が大好きで、なんでも知りたがりのダヴィンチ君。
家のすぐ近くにある、いきもの博士の研究室にいつも遊びに行っています。
優しいいきもの博士は、いつもダヴィンチ君の質問や疑問に答えてくれます。
そんな二人の研究室でのお話を中心に、昆虫をはじめ、生き物の生態、活動、不思議を
連載でお届けします。ぜひ、お子さまと一緒にお楽しみください!
これを読めば、生き物がもっと好きになる!

今回紹介したしアシナガバチやスズメバチ、ミツバチは、典型的な社会性昆虫です。社会性昆虫とは、人間が作るような社会制度を疑似的に作り、集団を維持、繁殖する昆虫のことです。
彼らの社会(群、コロニーなどとも呼ばれます)は、カースト(「階級」と呼ばれる場合もありますが、意味合いとしては「役割」といった感じです)によって統一されるのですが、ミツバチやアシナガバチの場合、カーストには以下の3つがあります。

・クイーン(queen)
・ワーカー(worker)
・ドローン(drone)

これらの名称は、研究者の間でよく使われる英語名です。

このうち、クイーンとワーカーについては、ダヴィンチ君との話の中にも出てきた、女王バチと働きバチを指します。では、ドローンとは何でしょうか?


答えは、オスのハチです。前に少し触れましたが、働きバチはみんなメスでした。オスバチは、働きバチとは別の、特別な存在です。ミツバチでも、アシナガバチでも、オスバチの数は働きバチの1割ほどです。そんな彼らの呼び名であるドローンと聞けば、まずイメージするのは、あの小型の無人飛行機だと思います。実は、飛行機のドローンの由来は、オスバチから来ているのです。一説には、世界初の無人飛行機がクイーン号、つまり女王バチ号という名前だったことから、それにあやかって以降のものはドローンと呼ばれるようになったといわれています。では、そもそもドローンとはどんな意味なのでしょうか。
英語の辞書を引いてみると、オスバチ、無人飛行機と出てくるほか、「ブンブンというハチの羽音」と出てきます。これはつまり、犬をワンワンと呼んだりすることと変わりないということです。クイーンやワーカーがしっかりとその立場を表しているのに、なぜオスバチだけはワンワンなのでしょうか?
その答えは、雄バチの生活史にあります。彼らは、先ほど言った通り、働きバチではないので、女王に仕えて働くことはありません。彼らオスバチの役割はただ一つ。それは、新女王と交尾をすることです。
ミツバチでも、アシナガバチでも、オスバチは無精卵から生まれます。新女王が生まれるのに合わせて、女王は受精をさせない卵を少しだけ産むのです。そして、新女王とオスバチが羽化して、成熟すると、彼らは一斉に巣から飛び出します。オスバチは、逃げ惑う女王バチを必死で追いかけて、交尾します。新女王と交尾できるのは、体格の良い女王に追いつける力をもったオスだけなのです。これを結婚飛行というのですが、このとき、オスバチは唯一、人前に姿を現します。普段であれば、働きバチと違って巣から出てエサをとりに行くことなく、巣に引きこもっているからです。つまり、人前に出てきたオスバチは、いつも女王を追ってブンブンと忙しなく飛んでいるのです。これで納得がいきました。オスバチは本当に、ワンワンならぬ、ブンブンだったのです。

さて、社会性昆虫は、他にもいます。ハチに最も近いものだと、アリもそうです。実はアリはハチに遺伝子的にかなり近く、アリは羽を持たないハチであると言っても過言ではないほどです。

アリのカーストの場合、上記の3つ(雄アリはドローンではなく、male:メイルと呼ばれます)のほかに、soldier:ソルジャーというものがあります。これは名前の通り、巣への侵入者を防いだりする戦い専門の働きアリです。彼らのあごは他のカーストのアリより大きく発達していて、より戦いに特化しています。ハチと比べ、羽や針が退化してしまっていることが多いアリですが、社会性を見ると、適材適所が出来る分、ハチより進化しているのです。

そんな社会性昆虫の中で、恐らく最も複雑なカーストを持っているのは、シロアリです。


シロアリは、ハチやアリとは全く別の種族です。具体的には、ゴキブリやシラミなんかに近い仲間です。シロアリの多くに共通する階級を以下に挙げてみます。

・ワーカー
・ソルジャー
・クイーン
・キング(king)
・ニンフ(nymph)

なんと、ハチではブンブンであったオスが、キングという地位を手に入れています。
シロアリの巣には、女王アリだけでなく王アリもいて、その両方にワーカーは仕えるのです。ちなみにシロアリの種類によっては、さらに副王、副女王がいたり、あるいは女王が複数いる多女王という、一夫多妻制のような制度をとることもあります。そしてもう一つ気になるのが、ニンフです。ニンフは、将来キングやクイーンになる素質を持った個体のことです。ですが、彼らはなぜか生まれてからしばらくはワーカーとして女王、王に仕えます。そして、ある程度成長すると、王や女王になれる証である、羽がはえた姿に変わるのです。その姿は、さながらギリシャ神話に登場する妖精ニンフのよう……かどうかは、見る人次第ですが、ブンブンと名付けられてしまったオスバチに比べると、随分と優遇されているように感じてしまいますね。

次回「噛まれたら、その日ばかり!?変わった名前のヘビたちの秘密」へつづく

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