主体的に考えて行動する大切さ…大学生&高校生の課題発見力ARTICLE

現在クラウドファンディングの「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で「高校生がアフリカ貧困層の子供を救う!伝統工芸をRe:Designして新たな価値へ」というプロジェクトが進行中です(2020年5月15日まで)。これは沖縄の高校に通う山田果凛さんと、早稲田大学に通う大下直樹さんが進めているプロジェクトです。2人は自らこの課題を発見し、取り組むことを決め、行動に移しました。

その課題発見力、解決に向けての行動力を見ていると、これからの時代に求められる非認知能力の高さを感じます。そこで山田さんと大下さんに、どのような経験をしてきたのかを含め、話を聞きました。

「生き抜く力」や「自律力」を持つ子どもとは

ダヴィンチマスターズではこれからの時代に求められる、「生き抜く力」「自律力(他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動する力)」を高めるプログラムや情報の提供を通して、非認知能力を高めるアプローチを行っています。

とはいえ、実際に「生き抜く力」や「自律力」が高まると、どのような子どもに育っていくのか。小学生や未就学児と向き合う中では、イメージが付きにくいかもしれません。

そんななか、ダヴィンチマスターズでは、クラウドファンディングでプロジェクトを実行している、現在高校3年生の山田果凛さんと、大学4年生の大下直樹さんの2人に、お話を聞くことができました。

神戸市の「神戸でチャレンジしたい若者」を増やす取り組みとは?

2人がこのプロジェクトに取り組むことになったきっかけは、神戸市が2019年から開始した起業体験プログラム「KOBE STARTUP AFRICA in Rwanda (神戸スタートアップアフリカ)」です。

ルワンダと聞くと、1994年に起こったジェノサイド(わずか100日の間に100万人にも上る国民が犠牲になった大虐殺)を思い浮かべる人もまだ多いかもしれません。

でも同国は20年の時を経て、「アフリカの奇跡」と呼ばれる経済成長を果たし、GDPは年平均7%上昇。世界銀行の報告書「Doing Business 2017」では、アフリカで2番目にビジネスがしやすい国にランクインしています。

神戸市は、そんな成長性のある市場で、かつ取り組むべき課題の多いルワンダ共和国に、起業を志す学生や起業家候補を派遣。ビジネスプラン作成や現地起業家・ベンチャーキャピタリストとの交流により起業家精神を身に着けることを目的とし、「神戸でチャレンジしたい若者」を増やす取り組みをしているといいます。

山田さんと大下さんはこの「KOBE STARTUP AFRICA in Rwanda」に参加しました。

「貧困層と富裕層の大きな格差」に気づいた

ルワンダのカガメ大統領は「ICT立国」を掲げ、今や「アフリカのシンガポール」や「アフリカの奇跡」としてビジネス界でも注目を集めていますが、2人が現地で目にしたのは、「貧困層と富裕層の大きな格差」でした。

「行く前のイメージと大きく異なっていたんです。街中では、子どもの物乞いも経験しました」(山田さん)

現地で様々な人に話を聞き、日本円にして日給300円前後で働いている人も多くいること、IT化の恩恵を受けられるのはごくわずかな人たちであることを実感した山田さん。起業するのであれば、恩恵を受けけられていない人たちに役立つような、モノづくりレベルの起業をしたい、と一念発起します。

実は山田さんは14歳のときにインドに行く機会があり、小さな子どもが餓死してしまうのを目のあたりにして、「なぜ、世界はこの命が救えないのか」という問いを持つようになったことから、ボランティア活動を通して社会課題に取り組んできました。その中で、ボランティアでは自らの力の及ぶ範囲が小さく、本当に世界の子どもたちを助けるためには「継続的、効果的、そして実用的」に着目してシステムを生み出さないといけないと気付いたと言います。

「プログラムに参加した別の方と話したときに、ボランティアでお金を得てはいけないというのは、グローバルスタンダードな考え方ではない、対価をもらうことで持続可能なシステムが構築できるということに気づきました」(山田さん)

でも、どうしたらシステムができるのか。高校生である山田さんは起業資金を持っていないし、「子どもを助けたいと言いながら、子どもに労働させるようなことになってはいけないし、ではどうしたらいいのか」(山田さん)と頭を悩ませることに……。

そのときに、相談したのが、同じプログラムに参加していた大下さんでした。

考えるだけでなく行動に移すことで自分自身を最大化できる

「山田さんの『貧困問題を解決したい』強いパッションを感じ、協力できないか考えました。もともと僕自身は、やりたいものがあるなら、それは大きければ大きいほうがよく、考えるだけでなく行動に移すことで自分自身を最大化できると考えてきました。その中で、山田さんが課題を持ってきてくれたので、形にするところからやってみようと思ったんです」(大下さん)

ボランティアに対する固定概念もなく、なぜビジネス化するのが難しいのかも知らなかったという大下さん。

2人はこうして、『伝統品を活かしながらも、日本の価値観とマッチングし、広く受け入れられる形を提案し、それを現地の雇用活性に繋げ、現地の方々の仕事を増やす』というプロジェクトをスタートさせることに。

そして現在、ルワンダの伝統アート、イミゴンゴを活用し、オシャレなアクセサリーとしての展開を提案し、現地のシングルマザーに生産してもらう体制を整えるため、クラウドファンディングを行っているというわけです。

2人の両親に共通する「見守る」スタンス

驚くのは2人が、これほど大きな社会課題を自ら課題を発見し、解決に向けて、自律的に動いていることです。

「生まれてきた意味や学校へ行く理由がわからなかったり、無気力に押しつぶされそうになったりした14歳の時、父にインド出張へ連れて行かれ、そこで5か国語を操るストリートチルドレンのボス的な存在の少年に会い、子どもが子どもらしく過ごすだけでは生きていくことができない世界を知ったことがきっかけで活動を始めました

私には弟が3人いて、10歳から15歳までは家族とタイに住んでいたのですが、母は『あなたたちは世界に羽ばたいていくのだから、世界のために頑張りなさい』というタイプ。父は私の活動を精一杯応援しながら、『本当にそれはよく考えたことなのか』と問いかけてくれるタイプなんです。でも両親ともに自分で考え、選び、行動するようにといつも話してくれて来たと思います」(山田さん)

親としては、こうしたほうがいい、ああしたほうがいいと、自分が知っているベストなものを提案したくなることも多いものですが、山田さんのご両親はそうではなく、常に山田さん自身に考え、選択する機会を与えてくれたと言います。

一方の大下さんは、「子どものころから自分のやりたいことをやってきた」タイプだと言います。

「両親から印象に残る声がけをされるというよりは、『これをやりたい』といったときに『だめ』と言われることがなく、『やってみたら』と見守ってもらったり、サポートしてもらったりしていたのかなと思います。

印象的だったのは公立高校と、早稲田大学系列の高校に受かり、結局公立を選んだ時。両親としては早稲田大学系列の高校に進学してほしかったのが本音で、さりげなく勧められたのですが、僕はのびのびとした校風にひかれて公立高校に進学すると伝えたんです。その時も、おそらく心配はしながらも、僕の意思を尊重してくれました」(大下さん)

そんな大下さんが、山田さんに力を貸したいと思ったのは、シアトルに留学した際の経験が大きいと言います。

「大学2年生の時に留学したのですが、その時にマーケティングを学びたいと思ったんです。でも、どうしたらいいかわからない。そこで実際にマーケティングで活躍されている方に直談判しに行ったのですが、その方が忙しいのにもかかわらず、無償で、メンターのような存在になってくれました。僕は、その経験から、『導く人さえいれば、どんどん伸びていくし、面白いことができるようになっていく』と痛感しました」(大下さん)

ダヴィンチマスターズでは、大下さんのお父さんにもお話を聞く機会を得ましたが、子育ての中で意識していたことは特にないですよとしながらも、「こちらからこうしなさいと言ったことはほぼないですね。やりたいといったことはできるように、できるサポートはするくらい」とお話しくださいました。また、子どものやりたいことにはとことん寄り添う姿勢が印象的で、野球少年だった大下さんのチームで、監督を務めたとも(お父さんのお話はまた別の機会に掲載予定です)。

2人のご両親からは、「見守る」「寄り添う」「支援する」スタンスが見て取れるのではないでしょうか。

行動したいと思う人が増えていくことで、社会も変わっていくのでは

最後に2人に、この活動を通して、子どもたちにぜひ知ってほしいことを、お聞きしました。

「なぜ、この活動をしているのかという思いを知ってもらいたいと思っています。知らないから無関心でいられるのであって、知ることで、興味を持ってもらえると思うんです。その思いだけで、救われることもあります。小学生のみなさんにも、世界には、いろんな子どもがいて、いろんな環境で暮らしているということを知ってもらえればと思います」(山田さん)

「自分で主体的に考えて行動することの重要さを知ってほしいですね。自分からアクションを起こすことで得られるものはとても大きいことを、留学中に学びました。

もちろんプロジェクトが大きければ大きいほど、やりたいと思っても厳しいと感じてあきらめる人が大半かもしれません。でも、どんなにスモールな規模からでもいいので、自ら考えて、実現に向けて、行動してみてほしい。その結果得られるものはとても大きいと思います。

また行動したいと思う人が増えていくことで、社会も変わっていくのではないかと感じていますし、僕自身、そうしていきたいと思っています」(大下さん)

 

「高校生がアフリカ貧困層の子供を救う!伝統工芸をRe:Designして新たな価値へ」詳細

3月26日よりクラウドファンディングサイト「CAMPFIRE(キャンプファイア)」内のソーシャルグッドに特化した、社会問題と向き合う人のクラウドファンディングプラットフォーム「GoodMorning(グッドモーニング)」で5月16日まで募集中。
2000円からイミゴンゴアクセサリーを先行販売。そのほか、プロジェクトのメンター権(3万円)や、購入者向けオリジナルデザインのイミゴンゴ(5万円)などの支援プランも用意。
https://camp-fire.jp/projects/view/245492

 

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