学力トップの『秋田型教育』とはARTICLE

全国学力テスト上位の秋田県大館市。
子どもたちの可能性を引き出す数々の取組みを保護者・地域・学校が連携して実施しています。

2018年8月25日(土)〜28日(火)、「ダヴィンチマスターズ」は秋田県大館(おおだて)市で3泊4日のサマースクールを開校します。全国学力テストでトップクラスの秋田県、その中でも独自の教育で効果をあげている大館市でサマースクールを行ない、自然との触れ合いはもちろん、大館市の教育の良さを取り入れることができるよう、保護者様向けに教育のスペシャリストが秘訣を伝授してくださいます。ご家庭ですぐにできることもたくさんある内容です。大館市でサマースクールを行なう意義について、また大館市の教育について、秋田大館市教育委員会教育監 山本多鶴子先生にお話しを伺いしました。

実体験を通した教育で自分の可能性を育てる

ダヴィンチマスターズ)
秋田県大館(おおだて)市では、ほかとは異なる教育理念を持っているとお伺いしました。その理念は「ダヴィンチマスターズ」と同じだと思っていて、2018年8月25日(土)〜28日(火)にサマースクールを実施させていただきますが、参加する子どもたち、そして親御さんは、このスクールから何を得ることができるでしょうか。

秋田大館市教育委員会教育監 山本多鶴子先生(以下、山本先生))
いま秋田県は、全国学力テストのトップクラスということだけが話題になっています。もちろん数値的な学力も将来自分の夢を叶えるためには必要な武器になるので大事にはしていますが、それよりも「おおだて型学力」というものを大切にしています。

「おおだて型学力」は、子どもたちが社会とのつながりや、自分のふるさとの良さを実体験を通して感じる力を養うもので、学校や教室の中だけの学習ではなく、実際に地域や職場に行って大人から生の声を聞いたり、働く姿を見せてもらうことで、働くとはどういうことなのか、自分のふるさとはこんなにいいところなのかということを実感できる、そういう教育を大事にしています。

このような教育を小学校低学年のうちから体験することによって、中学生、高校生になると本当の地元愛、自ら地元に貢献したいという思いが生まれてきます。もちろん思いだけではなく、実際にいろいろなイベントの運営に携わることで、“自分にも何かができる” ということを実感できたり、お年寄りのお手伝いをして感謝していただき、“自分も人の役に立つことができる” という“自らの可能性”を実感することができます。

ダヴィンチマスターズ)
いま多くの親御さんは、“良い職業に就けば成功” とは思っていません。「ダヴィンチマスターズ」に参加する親御さんの多くもそう考えています。それよりも、充実した生活が送れるようになることの方が、その子の幸せであり、満たされた人生と思っています。

そういう人生をつかむには、経済学者や教育学者は “非認知能力” が必要といっています。非認知能力は IQ(知能)とは関係のない、意欲、協調性、粘り強さ、忍耐力、計画性などのことで、一言でいえば「人間として生きていく力」です。そして非認知能力を高めるには人との関わりやいろいろな体験が必要不可欠で、しかも小学1年生〜3年生までにどれだけそういう経験をするかで、将来、非認知能力が高い人になるかどうかが決まってくるそうです。

「ダヴィンチマスターズ」は学力重視ではなく “生きる力” “人間力” を子どもたちに与えるきっかけになればと思って展開しているので、教育についての考え方が同じ大館市と一緒にサマースクールを実施することは、とても整合性があると感じています。

山本先生)
大館市でも最後は “人間力” を育てるところに重きを置いています。

「おおだて型学力」を受けて育った子どもたちは、“人生において何が幸せなのか” “どのように生きることが自分の人生を最終的に幸せにするのか”、そういう価値観も育まれています。それが大館市の教育の最終的なゴールで、その意味では「ダヴィンチマスターズ」とまったく同じ方向性を持っていると思います。

サマースクールを大館市で行ない、ただ単に参加する子どもたちや親御さんが田舎で何かを体験するということではなく、このような教育の方向性を共有していただくことも、このサマースクールに参加する意義のひとつだと思っています。

夏休みの自由研究は親子一緒に取り組む

ダヴィンチマスターズ)
夏休みの自由研究などにも独自の工夫があると聞きました。

山本先生)
自由研究も普段の授業と同じように、子どもたちの疑問や問いを大事にしています。夏休みがはじまる前に学校で、理科の自由研究、社会科の自由研究、それから発明・工夫の工作についての事前指導を行ない、そのうえで子どもたちは何に取り組むかを、親子で話し合って決めていきます。そして特に低学年の子どもたちは、親御さんと一緒に自由研究について調べるのが普通ですね。

夏休みが終わると発明・工夫の作品はコンクールに出し、毎年上位の大会に進む作品がありますし、自由研究は秋に発表会があるので、各学校から選ばれた作品は子どもたちが発表をします。その中から素晴らしい作品を選んで一冊の冊子にまとめるということを、大館市ではもう50年以上やっています。

各学校では自由研究の進め方についての手引書を作っていて、保護者の方々にも1学期の最後のPTAで説明し、夏休みは、お母さん、お父さんたちも一緒に子どもと研究をしたり、いろいろな貴重な体験をしてくださいねと呼びかけをしています。

秋田県の全国学力テスト上位の理由は復習重視の家庭学習にあり!?

山本先生)
家庭学習では「秋田型の家庭学習」が大変注目されています。塾に通う子どもが少ないのに秋田県が全国学力テストで上位なのは、家庭学習がその理由のひとつだと言われているからです。

基本的には、学校で学んだことを家に帰って復習する学習スタイルです。予習をする子どもはほとんどいませんが、習ったことは復習する。しかもそれが宿題という形ではなく、今日1日で勉強した中で何を復習したらいいか、何がわからなかったかを振り返ったうえで、子どもが内容を決めて取り組んでいます。

大館市でも家庭学習をとても大事にしていて、もう何十年という歴史があります。家庭学習のノートには先生が毎日必ずコメントや励ましの言葉を入れたり、友だち同士で家庭学習のノートを見せ合う習慣もあります。また授業参観では、親御さんがほかのお子さんがどういう家庭学習をしているのかがわかるように「家庭学習ノート展」も開いています。

そして使い終わったノートは捨てるのではなく、1年分を束ねます。そうすると15冊にもなるお子さんもいますね。年度の最後にノートを返すときには大きな金のシールを付けて、「1年間家庭学習がんばったね」と言って渡します。

学校で学んだことを家庭で復習し、きちんと定着を図る。自分で何を勉強したらいいのかを考え、自分の計画のもとに学習を進める習慣がつくことが家庭学習の意味、狙いです。これはみなさんご自宅ですぐにでもできることだと思います。

なお大館市では、家に帰ると子どもたちは必ず「何をやったらいいかわからない」と言ってだらだらするので、親御さんには、そんなときはこうアドバイスをしてくださいという事前指導は行なっています。

秋田の教育のキャッチフレーズは「問いを発する子ども」です。先生からこれをやりなさいと言われてやるのではなく、先生方が工夫をして、子どもの方から「これってどういうこと?」という疑問が沸いてくるような授業の入りをして、その疑問をその授業の学習の目当てにする、問題解決型の学習を、どの教科でも、家庭学習でも自由研究でもやっています。自分で問題意識を持って解決していくというやり方は、とても大事なことだと思っています。

「ダヴィンチマスターズ」のサマースクールで、たくさんのご家族とお会いできるのを楽しみにしています。サマースクールでは子どもたちが大好きな自然と、親御さんにとっては参考になる大館市の教育を体験できるようになっています。ぜひサマースクールに参加し、少しでも良いと思われたことは取り入れていただければと思っています。

プロフィール

秋田大館市教育委員会教育監 山本多鶴子
20年間 大館市内の小学校教員として勤務。
平成17年より秋田県教育庁、平成21年より秋田県大館市にて教育研究所所長などを経て平成30年大館市教育委員会教育監に就任、
現在に至る。教育関連講演会などにも数多く登壇。
プライベートでは、ご主人、ご主人のご両親、息子さん二人との、六人家族。市民マーチングバンドの代表として、指導運営にも携わる。

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