子どもを算数好きにする、今日からできる5つのことARTICLE
「ジュニア算数オリンピック」で金メダリストの母、和田聖子さん講演[後編]
2018年1月28日(日)開催の『ダヴィンチ☆マスターズ』で行なわれた保護者向けの講演会では、中学3年生と小学5年生の男の子を育てる、自称“算数が苦手なフツーのパート主婦”、和田聖子さんがご登壇されました。長男(当時小5)が2013年に「ジュニア算数オリンピック」で金メダルを受賞するまでに、家庭ではどのような勉強をしていたのでしょうか。
著書『「算数が得意な子」にするために親ができること』(ぱる出版)にも詳しく書かれていますが、今回は和田さん直伝の「今日からできる、5つのこと」をお届けします。
和田家で実践していた、算数に親しむための5つのこと
ここからは、具体的にわが家でしていた算数に親しむための5つのことをお話ししたいと思います。皆さん今日からでも取り入れてみたいただければと思います。
1. 横断歩道の幅を測り、横断歩道の幅×本数の暗算で長さを理解
わが家では子どもが未就学の頃、横断歩道の幅を測ったことがあります。でもその前に、まずは「あの幅は何センチかな?」という話をしておくのがポイント。次に実際に測ってみます。すると幅が何センチか分かりますよね。それから以降は、横断歩道を渡るときに「今、渡ろうとする道路は何メートルあるかな。横断歩道の幅×本数で何メートルかな」と、いつも暗算をするようにしていました。
合っているかどうかにかかわらず、答えを言ってくれたら「すごいねー!」と褒めましたし、慣れてきたら「計算をしてここを渡ったらお菓子買おうね」などご褒美も用意していました(何もしないときは、もちろん何も買いません!)。
2. カレンダーを活用して規則性、平均値を身に付ける
不要なカレンダーや、月が変わったカレンダーを子どもの手が届くところにかけて、そのカレンダーに、子どもと一緒に「お父さん、お母さん、おじいちゃん、〇●くんの誕生日」と言いながら日付けに丸を付けたり、「あと何日でお休みの日」などと声かけをして、日付けを指差しながら数えたりする習慣を付けることも効果的だと思います。
足し算、引き算が分かるようになったら、「丸を付けた数字の合計は?」といった計算や、「◯日から◯日を引くと何日?」という数字を横の列で見る問題、「7を足していくと、いくつになる?」と、縦に見ていく問題を出すようにしていきました。
割り算まで進んだら、縦と横に、3日ずつ日付を囲んで、「この日付を全部足して、囲んだ日付の数で割ったらいくつでしょうか?」という活用をしてみるのもおすすめです。子どもは答えが中央の数字になることに気が付くと、囲む場所を変えて試したくなります。このカレンダーの計算で、子どもは規則性や平均値を身に付けられるようになっていきます。
3. お金の重さで単位を理解できるようになる
グラムやキログラムなどの重さの単位は覚えるのがなかなか難しいですよね。わが家の場合、1円は1g、10円が4.5gなど硬貨の重さをすべて大きな紙に書き出し、その上に透明なテーブルマットを重ねるようにして、リビングのテーブルに敷いていました。
また硬貨はいろいろなものを理解するのに役立ちます。
日本銀行の「にちぎん☆キッズ」というサイトでは図柄や周囲のギザの有無まで細かく書かれていますが、例えば
- 1円=アルミニウム100%、直径20.0mm、重さ1.0g
- 5円=素材銅60~70%・亜鉛40~30%、直径22.0mm、重さ3.75g、穴の直径5.0mm
- 10円=素材銅95%・亜鉛4~3%・スズ1~2%、直径23.5mm、重さ4.5g
- 50円=素材銅75%・ニッケル25%、直径21.0mm、重さ4.0g、穴の直径4.0mm
- 100円=素材銅75%・ニッケル25%、直径22.6mm、重さ4.8g
- 500円=素材銅72%・亜鉛20%・ニッケル8%、直径26.5mm、重さ7.0g
などの数字が関係する情報だけ書き出しておいてもいいと思います。
お金は単位だけでなく、手で持ってみて、これが何グラムかということを実感しやすいと思います。他にも重さを理解するのには、野菜の重さを当てっこするといったことも役立つでしょう。
4. 苦手な単位は子ども自身に大きく書かせて覚える
グラムと同じように、小学2年生程度で習う「かさの単位」も、つまづきやすいポイントですよね。リットル(l)、ミリリットル(ml)はまだしも、デシリットル(dl)は日常ではなかなか使わない単位なので、理解しづらい。
わが家では、こうした日常生活に出てきづらいものは、大きな紙を用意して子どもに大きく書かせていました。ただし、ただ単位を
- 1リットル=1000ミリリットル
- 1デシリットル=100ミリリットル
- 1リットル=10デシリットル
と書いただけでは理解しづらいのも事実です。ですのでキッチンに一緒に立ってみて、大きなペットボトルには2L(2000ml)と書いてあるねとか、小さなペットボトルには500mlと書いてあるねとか、牛乳パックは1L(1000ml)と書いてあるねとか、小さなジュースのパックには200ml(2dl)と書いてあるねといったように、目に見える形で示してあげると良いと思います。
5. 買い物で数字が実生活に役立つことを実感
私自身が学生時代に「この勉強は何に役立つのか」と考えてやる気を失いましたが、それこそ昔のほうが、職業として見えるものが分からないまま勉強させられていたのではないでしょうか。だから子どもたちには、“何の役に立つのか”、実際に生活の役に立つということを、感じてもらいたいと思いました。
子どもが小さいうちは特に、近所にある八百屋さんで買い物をするようにしていました。個人商店の場合、単位がシンプルなことが多いので、500円玉を渡して「ニンジンと玉ねぎを買ったらいくらかな。おつりはいくらかな」ということを、3歳くらいからさせていました。八百屋さんだと「はい、おつり100万円!」という昔ながらの冗談も毎回出てきたりしますが(笑)それもまた、子どもには楽しいんですよね。
また、大型ショッピングセンターに入っているようなゲームセンターでは「100円を入れるとメダルが何枚出てくるかな?」「200円だと何枚かな」というクイズを出していました。
小学生にもなると、スーパーでの買い物中にも計算ができるようになってきます。買い物をしながら「今の合計はいくらか」が計算できると、持っているお金でどれくらい買い物ができるかも分かるようになりますね。またレシートの一番下、合計額の部分だけ切り取って「合計いくらか」を計算するようにしていました。はじめは近所のスーパーでの買い物のレシートでしたが、そのうち大型ホームセンターで単位の大きい計算までしたがるようになりましたよ。ドリルいらずでとても便利だと思います。
■ 2018年1月28日(日)開催の『ダヴィンチ☆マスターズ』の様子はこちら
プロフィール
和田 聖子
東京都の下町生まれ。2018年2月現在、中学3年生と小学5年生の男子の母。東京都立忍岡高校卒業後、帝国ホテルに勤務し、レストラン配属からはじめ、婚礼営業に携わる。
自身が理数系が大の苦手だったことから、わが子には算数を好きになってもらいたいと赤ちゃん時代から独自の算数教育をし、2013年、長男(当時小5)がジュニア算数オリンピック金メダルを受賞。著書に『「算数が得意な子」にするために親ができること』(ぱる出版)がある。