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感じたこと、思ったことを書き出し 人に伝える “言葉” にしよう!
2018/12/11
書籍『「言葉にできる」は武器になる。』著者、「世界は誰かの仕事でできている。」

コピーライター 梅田悟司さんインタビュー!

2018年11月23日(金・祝)に学習院女子大学で開催した「第11回 ダヴィンチマスターズ」で大好評を博した「表現力を高める、思考力の鍛え方」についての講演をされた、書籍『「言葉にできる」は武器になる。』『気持ちを「言葉にできる」魔法のノート』の著者で、横浜市立大学客員研究員・コミュニケーションディレクターの梅田悟司さんに、「T字型思考法」を用いた子どもの思考力の深め方、子どもとのコミュニケーション(伝え方)について、お話をお伺いしました。

お話をお伺いした、横浜市立大学客員研究員・コミュニケーションディレクターの梅田悟司氏さん。「バイトするなら、タウンワーク。」「世界は誰かの仕事でできている。」など、誰もが知っている数々の名コピーを生み出した、言葉を操る人気コピーライターでもある

感じたこと、思ったことを書き出し
人に伝える “言葉” にしよう!

ー 書籍『「言葉にできる」は武器になる。』『気持ちを「言葉にできる」魔法のノート』で紹介されている「T字型思考法」は、子どもと一緒にやると楽しみながら、自分の本当の気持ちに気がつくことができるなと思いました。実際に全国でワークショップも開催していますが、ワークショップを体験された方からの感想にはどのようなものがありますか?

夏休み中のワークショップが多かったので、「読書感想文を書けるようになりました」という感想をたくさんいただきました。今までは「おもしろかった」「つまらなかった」や、読んだ本の説明で終わっていたものが、自分の思ったことを書けるようになったようです。

「T字型思考法」は自分の “内なる言葉” からテーマをひとつ決め、そのテーマについて「なぜ?」「それで?」「本当に?」とテーマについて連想と深化を促す思考法です。文字として書き出すことで、自分はこんなことを考えていただんだ、という気づきがあります

 

感想文なので、やはり大事なのはそのストーリーから何を感じたか、そこで自分はどう思ったかですよね。でも教え方を知らないと「こう書いたらいいじゃない」と、答えを出しがちです。

でもそうではなくて、子どもが感じていることや、考えたことの要点を整理してあげたり、子どもが要点を整理できたうえで、どういう順番で書けばいいのか、ということを教えるのが、親御さんの本当の役割です。子どもから感想を聞き出してから文章化するという流れが大事です。

そもそも、感想を1行目からちゃんと書くって、大人でも無理ですよね。だから自分の中にある感じたこと、思ったことを書き出して、それらの要素をまとめるということが大切ですね。

ー 材料がなければ何も書けないということですね。

そうなんですよ。情報が何もないのに何か書けって言われるのはけっこう酷なことで、書くことが嫌いになる一番の理由だと思います。だからもっと自分の中に何があるのかに気が付こう、堀り出そうということをやったうえで、そこで出てきたいくつかを文章にしたらどうなるんだろうねと、こういうことを順番に考えてあげる必要があると思います。教育の場でも家庭でも、そういうふうに変わるといいなと思っています。

真面目な親御さんは、お子さんに書かせようとしますが、書かせようとすると、子どもは書くことに集中し、深く考えなくなります。親御さんはお子さんに問いかけて気持ちを聞き出し、メモをとってあげる方がいいと思います

「伝える」言葉と「考える」言葉
「考える」ための言葉を意識

ー 実際に自分でも「T字型思考法」をやってみて、“よく考える” ということが、どういうことなのかが、よくわかりました。考えているようで、実は考えていないということを実感しました。子どもの頃も「よく考えてからやりなさい」と言われていましたが、考えてみると、そのやり方は教わっていませんよね?

言葉」には2つの役割があって、「伝える」ということと、「考える」ということです。そして、“「考える」ための言葉” というものをどれだけ意識できているかというのが、とても重要だと思っています。

頭の良い方というのは、独り言を言いながら、考えていることを言葉として理解して、それで自らの考えをさらに深めたりしています。なので、頭の中で思ったことをイメージや動画のようなものではなく、「言葉」として認識し、それをT字型思考法のようなものを使いながら、さらに考えを深めたり広めることによって、“よく考える” という状態をつくっていくことができます。

ー 梅田さんのおっしゃる「言葉として理解する」というのは、頭の中で、考えていることを文字にして認識するということですか?

そうです。言葉を文字にします。言語化する弊害というものもあるとは思いますが、理論的に物事を考えたり、思考力を深めるということだけで言うと、「自分が今思っていることって何だろう?」ということを自分で意識することがすごく大事で、そのために文字に変換するんです。

だから楽しいときは「楽しい」、おもしろいときは「おもしろい」と感じればいいんですが、あの「おもしろい」という感覚はなんだったんだろう、という振り返りを親御さんと一緒にやって、その際には思ったことを頭の中で文字として認識していただければと思います。

「第11回 ダヴィンチマスターズ」で開催した梅田さんの講演「表現力を高める、思考力の鍛え方」には、たくさんの親御さんが参加。熱心に耳を傾けていました

問い詰めたら、子どもは答えない
答えやすい質問をしてあげる

ー 大人もですが、「ヤバイ」とか「かわいい」で何でもすませてしまいます。ひとつの言葉に状況にあわせて異なる意味を持たせるというのは、それはそれでおもしろくはありますが、他の表現を考えてもらうようにするには、どうしたらいいでしょうか?

「そうだね、ヤバいよね」って同調してから「そのヤバいってどういう意味なの?」って聞くといいかもしれませんね。最初から「どういう意味?」って聞くと拒絶された気持ちになりますし、「ヤバいじゃわからないから、もう少し説明して」と言うと「なんでわかんないの? これってジェネレーションギャップだね」となってしまいます。なので、まずは同意したうえで、「そのヤバいってどういう感じなの?」と、向こうにあわせていく感覚が必要ですよね。

あと、とても大事なのが、“答えやすい質問をしてあげる” ということです。「ヤバいって何?」って聞かれるとわからないんですよ。「そのヤバさはどんな感じなの?」にするとちょっと答えられるじゃないですか。なので、答えを求めようとするんじゃなくて、考えやすくなる「問いかけ」をしていくのがいいですね。

ー 答えやすい質問をするというのは、親の方も学びが必要ですね。どうやって質問したら子どもは答えやすいかなと。

そこは親が気をつけてあげたいところです。問い詰めるように聞くと答えなくなってしまうので、彼らの言葉で答えられるような質問をすることで、はじめて、子ども本人も自分の気持ちや思っていることに気が付くということが、絶対にあると思います。

「今日の講演でも「T字型思考法」をやっていただく際、「テーマは自分が答えやすいものに」とお伝えしました。杓子定規なテーマにしてしまうと、答えられなくなってしまうんです。答えやすいように、質問を設定してあげることはとても大事です」と梅田さん。テーマを設定した参加者の方は、みな熱心に「T字型思考法」に取り組んでいました

片付け・勉強、やってもらうには
行為の先の “未来” も語る!

ー 小学生のお子さんをお持ちの親御さんが困っていることに、何度言っても子どもがわかってくれない、言うことを聞いてくれない、ということがあると思います。一般的には「片付けをしなさい」「勉強しなさい」になってしまうと思いますが、これを子どもが自発的に行なうようになる言葉や伝え方はありますか?

片付けるという行為ではなく、その先に何があるか、ということを常に一緒に考えながら話すことが大事だと思います。

本にも書きましたが、『星の王子さま』の著書サン=テグジュペリの言葉で「船を造りたいのなら、男どもを森に集めたり、仕事を割り振って命令したりする必要はない。代わりに、広大で無限な海の存在を説けばいい」というものがあります。大海があるという事実と、そこに想いを馳せる力を与えれば人は自ら動き出すというもので、これは “その先に何があるか” という未来を伝えています。“それをやった結果、何が起きるか” 、それをセットとして話をすると、ちゃんと応えてくれると思います。

そしてこれは逆説的に言うと、親が、“その結果、何が起きるのかを想定できていない” ということなんです。

たとえば掃除なら、「●●ちゃんが掃除してくれたら “お母さん助かるな”」と言うだけで子どもの対応は全然違うと思うんです。「ここをきれいにしたら、“●●ができるようになるよね”」とか、掃除という行為を “やれ!”、ではなく、このために掃除をしましょうと、そしてその結果何が起きるかを見せてあげる必要があります。

「やりなさい」という言い方では、「やりたくない」「このままでいい」「やる意味ないじゃん」「散らかってた方が落ち着く」などととなってしまいます(笑)。親がちゃんと未来を言葉にできる、ということが大事ですよね

 

ー 勉強についても同じですか?

そうですね。「勉強しなさい」という言うと「なんで?」という返事があって、「将来、困らなくなるから」などというやりとりになってしまいます。でもこれでは、子どもにとっては全然意味がわからない(笑)。

さらに「なんで勉強しないと将来困るの?」「サッカー選手になるから別にいい」なんて言われると「うるさい!」ってなるじゃないですか。だからやっぱり、本当の目的とか、それをやることによって、その結果何が起きるか、親がちゃんと未来を言葉にできる状態にしておかないと、子どもに説明できないんですよね。

「●●ちゃんが将来こうなったらいいと思うから、勉強した方がいいと思う」とか、「もっとおもしろいことが見つかるから、これを勉強しておいた方がいいと思う」とか、親が、子どもが勉強する意味というのを、自分の “内なる言葉” と向き合いながら考えて、それを子どもに伝えることが大切だと思います。そうじゃないと、行為の押しつけになります。

梅田さんのおっしゃった、「親が、“その結果、何が起きるのかを想定できていない” 」という言葉には、大変驚くとともに、実感、そして反省‥‥。その行為をすることによって起こる未来、楽しいことが起きたり、夢の実現に近づくということを見せてあげないといけないんですね

この気持ちは何と表現すればいい?
自分の中の拙い語彙を駆使する大切さ

ー「内なる言葉」のなかには、最初はモヤモヤした感情のようなもので、それにあう言葉を探す必要があると思います。いわゆる語彙を増やすということですが、それは本を読んだり、映画を観たりというインプットになるでしょうか? 梅田さんはどのようなことをされていましたか?

僕は本も読まなかったし、映画も観てこなかったですし、むしろそこは切り離して考えてもいいんじゃないかなと思っています。

自分が何を思っているかは、“自分とどれだけ向き合えているか” によるところが大きいと思うんです。そしてそれを言葉にするのに、そんなに難しい言葉を知らなくても、説明できるはずなんです。だから、まずはすぐに言葉にできなくても諦めない、ということが大切です。

そして、もっと自分と向き合いながら、「何だこのモヤモヤした感覚は!?」と、そのモヤモヤを楽しみ、モヤモヤの正体を自分で見つけようとする姿勢が大事だと思います。

特に今は、たいていの答えがGoogle検索ですぐに見つかります。むしろそこへのアンチテーゼとしても、答えが見つからないということに、もうちょっと向き合うとか、時間を使うとか、そういう姿勢を持ってもらうことが大切だと思います。“自分で考える” ということをしないと、答えがわかっても、なんとなくわかったような気になって終わってしまいます。自分の中の言葉を使って表現しようとすることが大切です。

ー “産みの苦しみ” というか、“生み出す”という感覚ですね。その方が思考力も使いそうですね。

記述や論文のテストでは、そのときに持っている語彙力で戦うしかないじゃないですか。自分が考えていることを、自分が持っている拙い語彙力でどうやって表現しきるのかを問われているわけで、この力をいかに養っていくかが大事だと思っています。

モヤモヤにフィットする言葉を見つけて語彙を増やすことも大事ですが、モヤモヤした感覚をもっと意識して、自分がどういうことにモヤモヤしているのかを、足りないながらも自分の中の言葉を使って表現しようとするのが大切なんですよね

子どもの言葉の力は
親の問いかけと繰り返しで養う

ー 子どもの言葉の力を磨くのに、「T字型思考法」以外に、親が一緒にできることがあれば教えてください。

夜寝る前に、今日の感想を聞くというのはおもしろいと思いますね。「今日はこんなことがあったね。どう思った?」と話かけて、「こう思った」という返事には「なるほどね」と応えます。「初めてこんなことしたね。どう思った?」。「こうこうこう思った」「なるほどね、そう思ったんだ」ということを繰り返すことによって、子どもの中に生まれた新しい感情を言語として残してあげます。そして親が子どもの返事を繰り返すことで、子どもの頭の中で再認識されます。夜寝る前の1日の振り返りは、けっこう大事だと思います。

ー 梅田さんは奥様と意思の疎通がうまくいかない、伝わってない、というようなトラブルやケンカはないんでしょうか?

ありますあります、ケンカしますよ(笑)。何について悩んでいるのかとか、なんで怒っているのかとか、問いかけをしたり、わかろうとは思っていますが、でもコミュニケーションの常で、絶対に誤解は起きるんです。僕は「誤解は起きる」という前提で向き合っているので、トラブルが起きても、それは普通だと思っています。

たとえ短い文章でも、こちらが思った通りに伝わるとは限らないですよね。誤解がある前提で、どうコミュニケーションをとっていくか、ということが大事だと思っています。

寝る前の振り返りでは、「子どもの答えに対して『なぜ?』と問い詰めたり、怒らないのは絶対」と、梅田さん。子どもの話すことを聞いてあげて、「それってどういうことなんだろうね」と問いかけ、気持ちを引き出す。「そういうところを意識してあげると、おもしろいと思います」

 

 

(プロフィール)

梅田悟司(うめだ さとし)

1979年生まれ。大学院在学中にレコード会社を起業後、株式会社電通入社。マーケティングプランナーを経て、コピーライターに。広告制作の傍ら、新製品開発、アーティストへの楽曲提供など幅広く活動。ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、のどごし<生>「がんばるあなたがNo.1」のコピーライティングや、TBSテレビ「日曜劇場」のコミュニケーション・ディレクターなどがある。CM総合研究所が選ぶコピーライターランキングトップ10に、2014年以降4年連続で選出されるほか、国内外30以上の賞を受賞。著書に『「言葉にできる」は武器になる。』『企画者は3度たくらむ』『捨て猫に拾われた男』(日本経済新聞出版社)など。横浜市立大学客員研究員、多摩美術大学非常勤講師。

 

「言葉にできる」は武器になる。
梅田悟司(著)
日本経済新聞出版社 1,500円+税

「バイトするなら、タウンワーク。」「世界は誰かの仕事でできている。」など、誰もが知っている数々のコピーを生み出した人気コピーライター 梅田悟司さんによる、誰もが簡単に、子どもと一緒に実践できる「言葉」と「思考」の指南書。「『内なる言葉』と向き合う」「正しく考えを深める」「自分との会議時間を確保する」など、シンプルな方法で自らの考えを深め、理解し、人に伝え・動かす方法を学ぶことができる。

 

 

 

 

気持ちを「言葉にできる」魔法のノート
梅田悟司(著)
日本経済新聞出版社 1,200円+税

30万部を超えるベストセラー『「言葉にできる」は武器になる。』の待望の実践版! ストーリー形式で、子どもでも楽しく読めるようになっている。

想像してみてほしい。気持ちのすべてを伝えられた君の姿を。考えたこと、思いついたことを、きちんと言葉にできた瞬間を。「こうしたいんだ」っていう君の想いに、共感してくれる仲間が現れた光景を。そんな自分に近づくためのヒントが、この一冊に詰まっている。

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